飛び降りていないことの証明

つつがなく世渡りさえこなせれば

あとまえ(24) 『杞憂に外ならない』

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『杞憂に外ならない』

 

 このままではショートカットで一生を終えてしまう、という強迫観念に駆られて髪を伸ばしている。髪を洗うのもおっくう、乾かすのもおっくう、寝癖を直すのもおっくうという具合で、鏡の前に立つとため息が出る。伸ばしかけの中途半端な髪型を人の目にさらすのがためらわれて、外に出かけるのも嫌になってしまった。

 

 ヒステリックなものは、大概良くない。

 持論と言うよりは色眼鏡である。ヒステリックなもの、怒りっぽいもの、喧嘩っ早いものを、良しと評価することはまずない。

 人がヒステリーを起こすのは仕方がない。身近な人なら心配するし、そうでなければ距離を置く。ただ、作品の類は作者にコントロールされていてほしい。感情に任せて作られていてほしくない。

 ヒステリックな作風、芸風というものは確かに存在するだろう。しかし私はそれを見たくないのだ。どこか私の背中の方で、静かにやってほしいのだ。そう思うと、良し悪しはどうでもよくて、単に好みの問題なのだろう。
 

 自分で作ったものの悪口を言うものではない。心に引っ掛かることがあったとしても、世の中に出してしまうからには、そっぽを向いて口をつぐんでいようと思う。

 ただ、ここだけの話だ。私は『杞憂に外ならない』という本を作っている間、ひと時も休まずヒステリーを起こしていた。