飛び降りていないことの証明

つつがなく世渡りさえこなせれば

あとまえ(19) 「安全シールをはがしましたか?」

   「安全シールをはがしましたか?」(『安全シールをはがしましたか?』所収)

 

 表紙イラストは昧ちゃんにお願いした。私は昧ちゃんの絵のファンだ。本文がほとんど全くできていない時期に、「タイトルは『安全シールをはがしましたか?』でお願いします」というだけの無茶なお願いをして、応えてもらった。

 しかも、「3種類描いたので、選んで」とおっしゃる。3つ並んだ表紙・裏表紙のパターンを見て、その中から1つだけを採るという、何ともぜ いたくなことをさせてもらった。迷い始めると選びきれない。直感と、これまでの本との兼ね合いを考えて、ジャムの瓶の絵を使わせてもらうことにし、その旨 連絡した。

 しかし、そのメッセージを送った瞬間、別の候補に未練が出た。それは、「安全シールをはがしましたか?」というタイトルからは私自身はちっ とも想像しなかったイラストで、女の子が描かれているものだった。女の子の絵は他の本にあったので表紙の候補から外してしまったのだが、どうしてもその子 の姿が頭から離れなくなった。自身の物語を確かに持っている姿をしていた。

 私は2度目のメッセージを送り、「女の子を口絵として置くのはいけないことですか?」と図々しいお伺いをたてた。昧ちゃんは快諾してくれた。私はその絵を、扉を兼ねて巻頭に入れさせてもらい、それを基に表題作を書いた。

 アテンションとして、「先に絵があって、それを受けて『安全シールをはがしましたか?』という文章を書いた」ということはお伝えしておきた い。2年前の「一羽の鳥が飛行機から飛び降りる」のときもそうだったが、絵と文章が一致していないのではないか? と思われそうな節がある。その場合、責 任は文章の書き手である私にあることを確認しておく。

 問題の女の子は、表紙をめくったところに待っているはずだ。口絵のことばかり書いてきたが、私はこの表紙と、そこから目を移したときに現れる裏表紙の組み合わせがとても好きである。次回は見本誌コーナーにも置くので、実際の本を手に取って見てもらえると嬉しい。

 

 ※この記事は過去のダイアリーから転載したものです。