飛び降りていないことの証明

つつがなく世渡りさえこなせれば

雑念を退ける

何かを行おうとしても、雑念が湧いてくる。
集中できない。
そういうとき、どうすればよいのか。

例えば、「死ぬべきだ」という念が起こったとする。

反射的に、「いや、死ぬべきではない」と否定する。
だが、「死ぬべきだ」の思いは攻撃を緩めない。
「死ぬべきだ」
「死ぬべきではない」
「死ぬべきだ」
「死にたくない」
「死ぬべきだ」
「死なない」
戦いは止まず、不毛なままで、
本来手を付けるはずだった仕事からは離れていく一方だ。
だから雑念と争ってはならない。

気付きを入れる、という瞑想の手法を聞いたことがある。
「死ぬべきだ」と頭の中に浮かんだら、「雑念」とだけ考える。
「死ぬべきだ」の意味に真っ向から挑むことはせず、
ただただ「雑念だ」「雑念が起こった」とだけ思うようにする。
やってみた。が、なかなか難しい。
頭の中がざわめいて、静かになることがない。
「雑念」から無への引き継ぎがうまくいかない感覚だ。

いっそ受け入れてみたらどうだろう、と思いついて、試してみた。
死ぬべきだ。
そうだ、死ぬべきだ。
私は死ぬべきだヽヽヽヽヽヽヽ
繰り返す。
死ぬべきだ。
水面のイメージが浮かぶ。
さざなみが静まっていく。
平らかになりかけた水面の真ん中に、重たいものが落ちてくる。
激しい水しぶき。
大きく波打った水が、しかしやがては収まってきて、
今度こそ目に映るあらゆる動きが消えていく。

これ以上は危ない気がしてやめた。
私の頭にはまだ雑念が住みついている。