飛び降りていないことの証明

つつがなく世渡りさえこなせれば

借金取りの夢

 怖い夢を見た。跳ね起きてからも、今のが現実に起こったことだったかどうか、繰り返し確かめないではいられないような夢だった。
 駐車場で会った若い男、チャラい雰囲気だがなぜか人が好さそうに見える男から、家人が(ここが「自分が」でないあたり、夢の中の自分の狡猾を感じる)何気なく十万円を借りた。その後、私が訪れたバーで、マスターから「あの男は悪人ですよ」と聞かされる。
 借金をした翌日、男は仲間を三人引き連れて、私達の家に入り込んでくる。そして男達は――。
 こんなところで終わってもしょうがないのだが、この先は書かないことにする。もしかしたら小説の中で使うかもしれない。が、これを書いて世の中の借金取りがこぞって真似をしだしたらどうしよう、と余計な心配を私は半ば本気でしている。男達の行為のどれもが現実に起こりうることのように思えた。
 くだらない、ばからしい行為ばかりだ。しかし正気の私にはとても思い付かない嫌がらせだ。書けば、「何だ、そんなこと」と拍子抜けされるようなことばかりだろう。しかし、周りの同情を得られない嫌がらせをされるのは、それはそれでしんどいことではないだろうか。一つだけ例を挙げれば、男の一人は私が普段使っているフライ返しで、台所の隅をつつくように掃除していた。男はケラケラ笑っていた。そんなようなことをいくつもされた。そういうことだ。