今回の本を作るときに、プリントオンのわくわくドキドキモノクロセットを利用しました。本の用紙や加工を印刷所さんにおまかせするもので、一度やってみたかったのです。
装丁道楽というわけではなく、むしろノーアイディアで、自分で仕様を決めかねたので、えいやっと頼んでしまいました。
変型本のため、事前に「わくドキセットは適用できますか?」と問い合わせたところ、「可能ですが、使える加工が限られてしまいます」とのお返事をいただき、それでも構わないということで発注しました。
用意した表紙の図柄は、自分で撮った写真をAzPainter2でグレイスケール→油絵風に加工し、タイトルを入れただけの簡単なものです。これがどんな見栄えになるのでしょうか。
どきどき……。
おお、思った通りの形の本になってる。
でも、あれ、印刷は意外に普通?
普通の白い紙に、普通の黒インクで刷ってあるだけ?
とりあえず一冊手に取ってみると……。
あっ、触った感じが何か変! ぺとっとする。
ツルツルともザラザラとも違う、手に吸い付くような感触です。最初に「変!」と言ってしまいましたが、慣れてくると癖になりそうな手触りで、薄い本をちょっとリッチに感じさせてくれます。
こういう紙なのかと思いましたが、ベルベットPPという加工だそうです。
めくってみると、表紙の裏が黒色です。光沢が強く、遊び紙の柄が反射しています。
見返しの紙を貼ったのかと思ったら違いました。表紙そのものが、表面の黒い用紙をわざと裏返しに使って作られたものでした。つまり、普通の白い紙に見えた表紙は、実は黒い紙の裏面だったのです。凝った仕様!
遊び紙は、さりげなくめでたい雰囲気の、ざらっとした紙に金と銀の糸がランダムに織り込まれたもの。
今回は二冊組の本なので、同じ種類の遊び紙でも、それぞれ表情が異なって見えるのが嬉しいです。
これは偶然、と言うより私の側での思い込みですが……この本は「死んでから後、生まれる前。」というテーマで作られています(このテーマも割とこじつけですけども)。そういう本の表紙をめくったところに、冷たい黒と華やかな金銀のページが向かい合い、しかもその黒の中に金銀の糸が映り込んでいるというのは、なかなか素敵なんじゃないでしょうか。
本文用紙はコミック紙ホワイトです。いつも小説本のときは淡クリームキンマリ72.5kgを選ぶので、新鮮。やや厚みがある感じ? 白が目に痛いということもありません。読みやすいです。
裏表紙裏も、もちろん真っ黒です。顔が映りそうです。
見た目に派手だったり豪華だったりということはないのですが、めくったときに驚きのある、おもしろい本に仕上げていただきました。隠れたところにぜいたくさが盛り込まれているつくりは、私の好みにも、またこの本にも合っていると思います。わくドキセットで頼んでよかったです。
ただ、この本は当面イベント売りの予定がなく、通販のみで取り扱う予定なのです。よって「お気軽に見本をご覧くださいね」と言うことができません。よりによって、外観写真だけでは普通の白黒印刷にしか見えない本が!
なのでこうして、言葉を尽くして、この本を手にしたときの感動を記してみました。少しでも伝わったでしょうか?
最後に、本と共に封入されていた装丁内容のメモを書き写しておきます。
表紙:LKカラー黒180K(リバーシブル、ベルベットPP)
本文:コミック紙ホワイト
遊び紙:てまり金・銀(前のみ)
加工:変型断裁
※変型断裁は、セット外の特殊加工として自分で指定したものです。
この本、『吾が子踊る』は、死と生の間を描いた作品集です。小説編と詩歌編の二冊組。詳しくはこちらのリンク先をご覧ください。
11月14日(金)より架空ストアで販売開始です。どうぞよろしくお願いいたします。