飛び降りていないことの証明

つつがなく世渡りさえこなせれば

2014-01-01から1年間の記事一覧

一茶は一茶の姿を見たか

お笑い番組を見ていてふと考えた。コントと漫才の違いは何だろう。 コントで芸人は役を演じる。しかし、漫才でも「ほなお前○○な、俺××やるわ」と言って役に入ることはままある。とすると、その部分は決定的な差ではない。 しばらく漫才を眺めているうちに、…

私がトラックの運転手だった頃

私がトラックの運転手だった頃、いつか人を死なせるのではないかという恐怖に苛まれ、発進のたびにでたらめな十字を切っていた。そうして日々、初めての道をぐんぐん進み、バックで細い路地に入っていた。 その仕事を辞めてからは車を運転しなくなった。そも…

お肉を1キログラム食べたい

お肉を1キログラム食べたい。 ――と思うことがときどきある。大体、お腹よりは気持ちが、何となく満たされていないときだ。 私はこれまで、1キログラム食べたい、ようし食べよう、と意気込んでレストランに行っては、そのグラムあたりの値段におののき、120グ…

雑念を退ける

何かを行おうとしても、雑念が湧いてくる。集中できない。そういうとき、どうすればよいのか。例えば、「死ぬべきだ」という念が起こったとする。反射的に、「いや、死ぬべきではない」と否定する。だが、「死ぬべきだ」の思いは攻撃を緩めない。「死ぬべき…

あとまえ(26) 『吾が子踊る』

五十回忌の法要に参列したことがある。お経をあげてもらったあと、法話の頭でこういうことを言われた。「五十回忌というのは、もう、お祝いなんです」 亡くなって長い年月が経っても、覚えられていること。参列者には私も含め、故人と直接会わなかった人も多…

わくドキモノクロセットレポ

今回の本を作るときに、プリントオンのわくわくドキドキモノクロセットを利用しました。本の用紙や加工を印刷所さんにおまかせするもので、一度やってみたかったのです。 装丁道楽というわけではなく、むしろノーアイディアで、自分で仕様を決めかねたので、…

共有の弊害

これだけ無数の人と感想が共有できるようになっちゃうと、作り手にとってはハードルが上がるというのを越えて、もはや辛いものがあるんじゃないか。 特に連載物やシリーズ物をやっている人は大変そうだ。例えば連載のミステリ漫画を想定してみる。作者が渾身…

正しく寄り添うためのメソッド

ある夜、急な腹痛に襲われてうずくまっている私の隣で、家人はテレビのバラエティ番組を観ながら笑っていた。この説明だけだと家人が単に非道なことになるので、もう少し補足しよう。私は腹痛を起こした。家人は「大丈夫か」と聞いた。私は「もう少し様子を…

Nothing happened.

小説を書くときに、不自然なところを取り払っていこうと考える。不自然な状況、不自然な会話、不自然な展開。省いて省いて、自然な部分だけを残そうとする。 そうしてできあがった小説は、ついに何も起こらずに終わる。 それでもなお良い小説であることはあ…

名前のないお菓子

少し前、Twitterでこんな意味の文言が流れてきた。「感想とは、その作品から自分が受けた影響を語るものである」 我が意を得たり、と感じたし、また他人がそれを言ってくれて助かった、という思いもあった。 私の場合、小説などの同人誌を読んでその作者に感…

「我」と「吾」

私の中では「我」と「吾」の使い分けは明確です。普通は「我」を使います。「吾」は特別なときだけです。 特別というのは、「吾」を「あ」と読ませて、言葉のリズムを整えたいときです。 なので私の場合、「吾」を使うのはほとんど短歌や俳句の中だけです。…

今日が明日にかわるとき

Eテレの人形劇で、「今日が明日にかわるのはいつ?」という内容の話をやっていた。 私はそれを聞いて、「それって、明日が今日にかわるときなのでは?」と思った。 今日をtとしたとき、明日をt+1と表し……と考えてみてもよくわからない。 「私」を今日におい…

遺書は一人のためのもの ――夏目漱石「こころ」の記憶

私は何千万といる日本人のうちで、ただあなただけに、私の過去を物語りたいのです。あなたは真面目だから。あなたは真面目に人生そのものから生きた教訓を得たいといったから。 夏目漱石「こころ」を読んだ。この話の筋は有名過ぎて、私は自分がかつて「ここ…

第十八回文学フリマ フリーペーパー委託頒布のお知らせ

第十八回文学フリマ2014年5月5日(月祝)11:00-17:00 【D-06】白昼社さまのブースにて、フリーペーパーを委託頒布していただきます。 『今日の続きでありますように』(A5判/16ページ/横書き/無料配布)出会った時は未読。読むことでは収まらない、本にま…

あとまえ(25) 『今日の続きでありますように』

肝心のところを言わないまま、周縁の予告とあとまえ。 私のいないところで出る本だからと、自意識は普段より盛り込んだ。表紙に著者名を入れ、本文には「私」を多用し、巻末にはあとがきを付した。肩の力が入り過ぎた文章もそのままだ。自分は大した者ではな…