飛び降りていないことの証明

つつがなく世渡りさえこなせれば

工場の桜


××工場の桜はきれいだね、と毎年皆が言っていた。
広い敷地を囲うように咲く桜の列は、確かに見事だった。無骨な建造物との対比も、却って計算されたようでさえあった。

昨年の末に××工場はなくなり、その場所は更地になった。
今年は異なる景観の中、桜は変わらず満開の花を咲かせた。

国破れて山河あり。

そして、あの桜の持ち主は工場ではなく、工場沿いの道路の管理者だったのだろうな、と皆は思った。