飛び降りていないことの証明

つつがなく世渡りさえこなせれば

ナタリーの家

■イベントに出展する際のサークル名を変えます。少しだけ変えます。

 平素は格別のお引き立てをいただきありがとうございます。
 これまで同人誌即売会などのイベントに出展する際に「ナタリー」というサークル名を使ってきましたが、今後はそれを「ナタリーの家」としたいと思います。
 どうぞよろしくお願いします。わたりさえこでした。

■ナタリー、あなたはこれまで宿無しでした。

 ――ということでお知らせは終わりなのですが、最後の機会かもしれないのでナタリーの話をします。
 手元の記録によると、初めてナタリーというサークル名を使ったのは2009年2月に文学フリマに出展したときです。個人サークルですから自分の筆名でも良かったのでしょうが、カタログに太文字で自分の名前が載るようなことは気恥ずかしく、便宜上何か設定しようと考えていました。
 ナタリーと決めたのは直感で、これから述べる由来は全て後付けに過ぎません。でもこれだけ理屈がつけられるということは、割といい直感だったのではないかな、と思えます。

  • できるだけ意味のない名称にしたかった

 ナタリーは人名です。でも誰のことでもありません。誰のものでもない名前に意味はありません。親の願いくらいは込められているかもしれませんが、生まれたばかりの子には関係のないことです。辞書に載っている言葉には意味があります。人名にはそれがないのです。

  • フランス語教科書の登場人物

 誰のことでもないと言ったばかりですが、ナタリーという人物に1人心当たりがあります。学生時代に使っていたフランス語の教科書に登場する Nathalie です。彼女はこれから初めて会う John という男性について、こんな話をします。
「彼は美形? かっこいいクルマに乗ってるって? お金持ちなの? 南フランスにお城を持っているのね。独身かしら? ガールフレンドもいないの。若いかしら? ……若く見える? えっ、50歳? ああ、残念!」
 ナタリーを Nathalie と綴ったのは疑いなく彼女に拠るものです。南仏の城を諦めたナタリーは今日まで家を持たずにいたのでしょう。

■せっかく家があるのだから。

 当たり前のことですが、人と家とは別物です。家はハコです。入れ物です。
 わたしは(わたりは)1人が好きです。うっかりすると何でも1人でやりたがります。1人で始めて1人で進めて1人で終わらせるのが楽です。
 でもこうしてせっかく家をつくったのだから、これからはもっと人を招いて、人の手を借りて、人に助けを求めたいと思います。
 でも結局、ずっとこの新しい家に引きこもって1人きりなのかもね、ともまだ思っています。そうならないようにしたいです。