飛び降りていないことの証明

つつがなく世渡りさえこなせれば

エイプリル・フール!

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 エイプリル・フール!(形から入る性質)

 

 風で飛ばされてきた風船を拾ったのだ。

 車道を転々と転がってきて、たまたま歩道を歩いていた私の近くで動きを止めた。車の前に風船が出てきたら危ないな、と思って、私はそれを拾い上げた。

 すると、横断歩道の向こうにいた親子連れと目があった。若い母親が、こちらに向かってにっこりと会釈した。私は、ああ、あの子供がこの風船を手放してしまったのか、と察した。

 私は、はじめからその横断歩道を渡るつもりだったのだ、というように歩行者用の止まれマークの上に立って、信号が変わるのを待った。赤信号の時間がいやに長く感じた。母親の方をちらりと見ると、彼女はもう一度微笑んだ。

 信号が変わり、その真ん中で私とその家族連れは出会った。母親は「ありがとうございます」と言い、私は「いいえ」と返し、風船は手渡された。意外なことに、その親子連れはそこでUターンして元の道へ戻って行った。私から風船を受け取るために、わざわざ信号待ちをしていたのだった。

 悪いことをしただろうか、と考えてしまった。そして、この話に善悪の教訓をつけようとするのは、ちょっと複雑で厄介だと思った。私は昼食の計画を立てることにした。カルボナーラを食べようと簡単に決めた。